軽量ネックスピーカーの比較@2020
違いが分かりにくい軽量ネックスピーカー
2020年現在、販売されているネックスピーカーは「音質重視」と「使い勝手重視」のものに大別される。前者ががっつりと音楽を聴くのに特化しているのに対し、後者は「作業中に音楽をながら聞きする」「TVの音声を耳元で聞く」「web会議のヘッドセットとして使う」ような使用を想定した軽量な製品群だ。
「音質重視」のネックスピーカーはメーカーごとに結構個性的で、レビューも多い。一方「使い勝手重視」の方は、どれも似たり寄ったり(後述するが実際同じものも多い)で、今一つ選択基準が分かりにくい。そこで、この記事では、それらの軽量ネックスピーカーの違いについてまとめた。
先に断っておくと、筆者が所有しているのはJVC SP-A7WTだけで、実際に他の製品を使って比べてみたわけではない。あくまでも「カタログスペック上の違い」をまとめた記事なので、その点はご了承願いたい。
他サイト様では、以下のような比較記事が参考になる。
ミドルレンジ軽量ネックスピーカーの比較表
軽量ネックスピーカーのボリュームゾーンは9000~15000円のミドルレンジ帯である。メーカーは、SHARP, JVC, Pioneer, KENWOOD, EM-Tech等。マイナーメーカーがひしめくローエンド帯(3000~5000円)はかなりカオスなのでパス。2020年5月現在、ミドルレンジ帯で実売されている軽量ネックスピーカーは、主に以下の5種類である。
たくさんあるなぁ、と思われるかもしれないが、実質的には以下の3種類しかない
- 第一世代MY THEATER系(EM-W100, SP-A10BT, CAX-NS1BT, AN-SS1): → このカテゴリの主力。見た目が微妙に違うだけで、中身は(おそらく)同じOEM兄弟。オリジナルはEM-W100。
- 第二世代MY THEATER系(SP-A7WT) → 第一世代MY THEATERの後継機種。「apt-X LL対応」と「サブスピーカー増強」が主な変更点。本家韓国ではEM-W110という機種もあるが、SP-A7WTとは同型機では無いようだ。
- 独自系(SE-C9NS) → 唯一全然出自が違う。
選択を特に厄介なものにしているのが、第一世代MY THEATERの存在。これらのOEM兄弟は「カラーデザイン以外の見た目は完全に同じだが、公式スペック上では重要な違いがあり、ところが実態はやはり同じ中身であるっぽい」という非常にめんどくさい状況になっており、情報が非常に整理しづらい。 とりあえず順番に違いを見ていく。
見た目
まず下位4機種(EM-W100, SP-A10BT, CAX-NS1BT, AN-SS1)はそもそも本体形状が完全に同じ。ロゴや筐体カラーだけが違うが、カラーバリエーションは5色展開のAN-SS1が圧勝。後継モデルであるSP-A7WTはちょっと地味になった。SE-C9NSは先端がメタリックな個性派。
インターフェイス
第一世代MY THEATER4機種は電源がスイッチ式になっていて、ON/OFFが素早く切り替えられると評判が良い。一方上位2機種(SP-A7WT, SE-C9NS)についてはプッシュボタン式なので、電源OFF時に長押しが必要。ハンズフリー通話に出るためのボタンは第一世代MY THEATER系にのみ搭載されている。
重量
どれも軽い。敢えて言うならSE-C9NSがちょっと重いが、あんまり気にしなくても良い気がする。
連続使用時間
どれも長い。敢えて言うならSE-C9NSが長い。消費電力はどのコーデックを使うかにも大きく左右されるので、たぶん第一世代MY THEATER4機種は測定方法に差があるだけだと思う。いずれにせよ14 hあれば十分な気がする。
防水
上位2機種(SP-A7WT, SE-C9NS)のみIPX4対応。アウトドア派の人は押さえておきたいところ。
Bluetooth世代
上位2機種(SP-A7WT, SE-C9NS)のみBluetooth5.0。他は4.1。
対応コーデック
一番重要であると同時に、メーカー公式サイトが全然アテにならないポイント。 もし公式発表を信じるなら、第一世代の中ではaptX/AACに非対応なAN-SS1はバランスが悪く、SP-A10BT, CAX-NS1BTはまぁまぁだが、結局これらの完全上位互換のEM-W100がお得ということになる。しかし、「AN-SS1を実際に使ってみたらaptXに対応していた」という証言がネット上に多数見られ、中にはaptX LLにも対応していたという報告もある。 もし実際には完全に同じ中身であるとすると、上記の評価は逆転し、値段が一番安くカラーバリエーションも豊富なAN-SS1が一番お得で、単に値段が高いだけのEM-W100や、Bluetoothアダプタが付属しないSP-A10BT, CAX-NS1BTは丸損ということになる。というかSHARPの公式説明書を見ると、aptX対応とは一言も書いてないのに、なぜか「aptXはQualcommの商標うんぬん」とかの但し書きは書いてある。ライセンス料とかにも絡む話だと思うんだが、いいのかこんなに雑で。
同様に、第二世代であるSP-A7WTの評価も変わってくる。公式にはSP-A7WTが唯一のaptX LL対応だが、その分3000円ほど高い。2020年現在において、aptX LLに対応していることの価値はかなり大きいため、この差額なら第二世代を選ぶ人も多いと思うが、実は第一世代も密かに対応していたとなれば話が変わってくる。実は本体の対応状況に差はなく、Bluetoothアダプタ側だけの違いなんじゃないか?というのが筆者の予想。
独自路線がSE-C9NS。aptXに非対応な代わりに、唯一のAAC対応。つまり、iOS相手に高音質なAACコーデックで入出力が出来る。一方、AAC非対応製品相手だとSBCになる。SBCにしろAACにしろ、遅延が大きなコーデックにしか対応していないのは痛い(ただし経験上、iOSでの動画視聴に限っては、AACでも遅延が極端に小さくなる。たぶんOS側で色々調整してるんだろう)。
なお、各コーデックの特徴については、以下のサイトが良くまとまっていて参考になる。情報の変遷が激しい分野だが、2020年現在の方針としては「aptXの対応はマスト。できれば超低遅延コーデックにも対応」となるだろう。iOSの存在によってAACとの兼ね合いが話をややこしくしているが、基本的にaptX系に対応しているとバランスが良い
7. USB形状
SE-C9NSのみUSB type-C。他はmicroB。時代的にはtype-Cにしたいところだが、まぁ流石に他の項目が優先される。
8. 付属Bluetoothアダプタについて
メーカー公式が全然アテにならないポイントその2。 前提知識として、FastStreamやaptX LLのような超低遅延コーデックは、基本的にハードウェア的にエンコーダーを実装する必要があり、かつアンテナの干渉問題からスマホ等に内蔵することがほぼ不可能、という制約がある。したがって、これらのコーデックを使いたければ、「対応するBluetoothアダプタは付属するのか」「そのBluetoothアダプタの仕様はどうなっているのか」が非常に重要である。
メーカーの説明書を見ると、どうも付属のBluetoothアダプタのUSB-Aコネクタはただの給電部位であり、アナログ音声をネックスピーカーに飛ばすだけの機能があるように見える。
ところが実際に使ってみた人の声によると、普通にUSBオーディオ出力が可能であることが分かっている。つまり、TVだけでなくPCゲーム等もデジアナ変換を介さずに超低遅延で楽しめるということで、割と嬉しいポイントである(逆に言えば、付属しないSP-A10BT, CAX-NS1BTの評価は下がる)。ちなみにOSからはBluetoothドングルではなく、単なるUSBオーディオ(スピーカー)として認識される。
そしてさらにややこしいことに、どうもこのBluetoothアダプタはWindows等のOSから見て、USB音声入力機器(マイク)としても認識されるようだ。筆者が持っているSP-A7WTでは認識されるだけで音は拾えなかったが、AN-SS1のレビューを書いているサイトの中には、Bluetoothアダプタを介したマイクも使えると言っている人もいる。もし本当にそうなら、非常に貴重なA2DPプロファイルヘッドセットとして機能していることになる。
総じて、仕様くらいまともに書いておいてくれという感想……。
9. 実勢価格
上位2機種で数千円高い。次点でEM-W100。最近(2020年5月)は、テレワーク需要により高騰気味。
10. 音質
上にも書いたが、直接比べた訳ではないので伝聞評価・・・。 SP-A7WTとSP-A10BTを実際に聴き比べてみたブログ様や価格.comのレビューによると、SP-A7WTの音質はSP-A10BTと比べてかなり改善しているらしい(特に低音域)。第一世代MY THEATER4機種(EM-W100, SP-A10BT, CAX-NS1BT, AN-SS2)の音質に違いは無いだろうから、SP-A7WTが一歩リードしているという評価で良さそう。実際SP-A7WTは私も使っているが、十分に軽い音楽視聴に堪えると感じる。SE-C9NSは未知数。
結論
* 基本的にはSP-A7WTがおすすめ。aptX LL対応&スピーカーの音質改善が差別化ポイント。
* お得感が高いのはEM-W100。OEM4兄弟の最上位。
* 予算が足りない場合は、(1)汎用性重視・音質重視ならSP-A10BTとCAX-NS1BT、(2)超低遅延志向でトランスミッタ使用を前提に出来るならAN-SS1、という棲み分けか。カラフルなものが欲しければAN-SS1一択。
* SE-C9NSはiOS特化型。あとは極限まで電池持ちに拘る場合。
巷の情報を信じるなら、
ただしメーカー非公式の情報が含まれていることに注意。